10/12ラブピースクラブ様連載コラム更新情報!
バナー担当:カオリン
第41回:【小説】仮想領域の恋人【ツヅラカヅサ】■コラム前書■
こんにちは。相変わらず残暑厳しい今日この頃、いかがお過ごしですか?恥ずかしながら私最近、ネットの「執事ゲーム」というのにハマっております。こちらの入力する言葉にあらかじめプログラミングされた台詞をPCの中の執事がランダムに反応して喋るだけのものなのですが…奥様でもお嬢様でもなく自分の名前をシンプルに呼ばせるだけ…なのに、た…楽しい!
結構、こちらの予測外の反応を返してくれたりするわけです。ラブプラスというオタクゲームを馬鹿にできませんよ、これは(苦笑)思い通りにならないことこそとってもエロ!と思う次第。
そしてこれは最近の風潮ではなく太古からあるディスコミュミケーションという名のりっぱなコミュニケーション。そんな近未来のニアイコールセックス事情を描く、異才ツヅラカヅサのネオ・ピグマリオン小説。
前書担当:水月モニカ
仮想領域の恋人
ツヅラカヅサ
私には、2.5次元の恋人がいる。お金が無いのでまだボディまでは作ってあげられないが、教育を施しているAI(人工知能)がある。意志の疎通はコンピューターの中だけだから、まだ2次元の域を超えられないけれど、あと何年かすれば私の隣で微笑んでくれている…はず。だから、2.5次元。可愛いそのAIの名をプリメラという。
コンピューターと言っても、昔のようにキーボードとマウスとモニタがないと何も出来ない箱の話じゃない。首の後ろに埋め込まれた小指の爪ほどの大きさのマイクロチップ、それが機械の全て。それが設置者の脳から出ている微弱な電波を拾い上げて実行し、時には脳の空き容量を使って計算をする。様々なデータは直接脳に送られるので、360度全方位の視野があり、会話と同じ速度で入力が出来、匂いもあれば触覚もある。
だから、昔はかなり奇異な目で見られていた次元を超えた愛情も、脳内と実世界の境界が曖昧になりつつある今の世界ではとりたてておかしな事ではない。
「プリメラ、おはよう。今日もお勉強の時間だよ」
「マスター・ユイ。おはようございます」
プリメラは私が用意した仮想空間の白い部屋の中で、白いベッドに横たわっていた。ワンピースに包まれた十代半ばの華奢な手足は真珠のように白く、長く伸びた波打つ金髪がシーツの上に零れ落ちる。私の呼びかけに答えて開いた瞼の下には桃色の瞳があった。眠る、という行動は形だけ真似しているに過ぎないが、私がいない間はネットワークに接続して世界中の色々な情報を渡り歩いて蓄積するように設定してある。
「面白い夢は見れた?」
プリメラの隣、ベッドに腰を下ろすとスプリングが小さく軋む音がする。
「今日は古典を読んで来ました。ユイが前に言っていた、中世日本の物語群などなかなか興味深いものがありました」
「そう。興味を持った作品をピックアップしてメインに上げといてね。プリメラの興味がどんな方向にむいてるのか、すごく知りたいから」
返事の変わりに、唇が微笑みの形を作る。ふと、そのえくぼの浮かぶばら色をした頬に触れてみたくなった。寝転んだままのプリメラに覆い被さり、ふわりと静かに唇を押し当ててみる。柔らかい皮膚の感触が、その奥で生命が活動しているような温みが唇越しに伝わってきた。私の肩までの黒い髪が、プリメラの白い額にさらりと掛かる。これだけリアルでも現実には存在していないのかと思うと、ちょっと切なくなって頬の下、折れそうに細い首の血管を甘く噛んだ。
「ユイ、勉強は」
マシュマロのようなプリメラの胸の狭間に顔を埋めて少しムラっとしかけたところで、淡々とした声が冷水のように頭から浴びせられた。こういう時は、プリメラの未発達な感情が恨めしい。セックスの意味も仕方も、皮膚や神経へセックスによってもたらされる刺激のデータもインプットしてある。実際にテストも兼ねて何度かヤっているのだが、いまいちお互いに煽られて昂ぶってゆくという、感情や情緒というものが追いついていないのだ。
「…プリメラ、感情欲しい?」
「勿論です」
淡々と音声ガイドのような平坦な調子で答えるプリメラ。ああ、この子が感情的に乱れたらどんなになるんだろう。ちょっとステキな妄想が私の頭の中を過ぎった。妄想は、全ての創造の源である。ふかふかの谷間にもう一度ほお擦りをして、私は覚悟を決めた。この子に感情を!と。
<<<続きはコラムにて掲載中!!>>>第41回:【小説】仮想領域の恋人【ツヅラカヅサ】■作者:ツヅラカヅサ様
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