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第48回:【小説】千代と高尾【藤間紫苑】第1回■コラム前書■
こんにちは、ビアチカです。大正末期から昭和初期のモダニズム華やぐ時代。アールデコな装いの大人のレズビアンエロチカがあったとしたら正にこんな感じではと思わせる、藤間紫苑の『少女帝国』時代の名作「千代と高尾」の登場です。純文学ファンには主人公二人の設定が二重に楽しめる仕掛けです。
前書担当:水月モニカ
題名 千代と高尾
著者 藤間紫苑
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夢なんですわ、きっとこれは夢……。
私は女の後ろ姿を汽車の中で見付けた時、そう思いながら何度も瞬きをした。
女は平均的な日本人女性より、頭一つくらい背丈が高く、髪型をデートリッヒのような巻き毛にし、薔薇の造花を挿していた。きっと銀座を歩く時には洋装なのだろう。
肌の色は浅黒かったが、白粉は塗らず、髪に挿した造花の薔薇と同色の紅い唇をしていた。その紅は私の見た事のない色で、輸入物だと思われた。
女は手摺に寄り掛かりながら、流れる風景を親の敵のように見つめていた。特別車ではない普通車に何故乗っているのだろうか、そんな疑問を持つ前に、私は女に声を掛けていた。
「ねぇ、ちょっと貴女。小牧高尾さんじゃありませんか。」
私の声に女は振り返り、こう答えた。
「貴女なんて知らないわ。」
「私は貴女を知っているわ。私の名前は千代。私……」
高尾は私の言葉を遮った。
「千代。
あの三流作家とおんなじ名前ね。改名すべきだわ。
貴女、あのスキャンダラスな艶本を読んだというの。」
高尾は唇に薄笑いを浮かべながら私を見た。
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■作者紹介■
■藤間紫苑様 ■個人サイト:藤間紫苑のHP
http://www.fujimashion.com/■同人活動では昔「少女帝国」を主催していました。またレズビアン同人誌「XX」に投稿していました。
その後Piasという今は無きゲームメーカーから「人形の匣~愛のディティール~」というゲームの企画・シナリオをさせていただきました。 2010年春から
http://clap-comix.com/のブログにて小説を連載しています。
よろしくお願いします。