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1/14日ラブピースクラブ様コラム更新!
第55回:【小説】千代と高尾【藤間紫苑】第2回■コラム前書■
明けましておめでとうございます。今年もビアチカをひとつよしなに。御屠蘇気分も抜ける頃、ぴりりと気持ちの姫始めしませんか?大好評の千代と高尾の第二話!
第1話は
第48回コラムに掲載中。
前書担当:水月モニカ
題名 千代と高尾
著者 藤間紫苑
2
私は高尾の後を追って、汽車を降りた。
高尾の足は早く、私は付いていくのがやっとだったので、私は今日訪問する筈だった宅へ連絡するのを止めにした。
私達は海水浴客で混み合ったホームを通り抜け、タクシー乗り場へと向かった。
海岸へと向かう観光客達を横目で見ながら、タクシーは細い道を走って行った。
私達を乗せた車は途中で観光客達の行列とは違う道へと入って行った。
きっとこの先に高尾さんと湯浅が向かったホテルがあるのだわ。
私は潮の香りがする細い川を見ながらそう思った。
タクシーはマリーナにあるホテルの玄関で止まった。
私はタクシーを降りると高尾に向かって言った。
「ここはあのホテルなのね。
湯浅と入ったというあのホテル……。」
高尾は私の言葉を無視し、玄関へと向かった。
私は慌てて高尾を追いかけた。
高尾は私に話し掛けず、帳簿に名前を書き、鍵を受け取り、部屋へと向かった。
私は巾着を胸元で抱きしめ高尾の後を追って行った。
「どうぞ。」
高尾は扉を開き、私を部屋の中に招き入れた。
部屋には大きなソファーベッドと美しい木彫りのテーブルが置いてあり、ラジオが机の上に置いてあった。
高尾が窓を開くと、白いレースのカーテンがひらひらと風になびいた。
「風が気持ちいいわ。
貴女もこちらにいらっしゃい。」
私は巾着をテーブルの上に置いて、高尾の側へと寄った。
「まぁ、綺麗だわ。
ヨットハーバーもあるのね。」
私は高尾の腕に触れた。
私は暫く高尾を見上げていた。
高尾はよそよそしく、決して自分から私の方へ体を傾けたりしなかった。
高尾は口も利かず、黙って海を見詰めていた。
「高尾さんは湯浅の事、もうなんとも思ってらっしゃらないのでしょう?
私、高尾さんについてずっと考えていましたのよ。
高尾さんが本当に求めているのは湯浅ではないと、私、知っていますわ。
だって湯浅って、あの小説を読む限りではお飾り男で……、ちょっと危険な遊びをするには華もありますし、丁度良いけど、真剣に愛するには役不足なのですもの。
あの方ってちっとも高尾さんの事を理解していませんわ。
……でも、高尾さんもちっとも自分の事が解っていらっしゃらないわ。」
高尾が急に口を開いた。
「私、男になりたかったのよ。
それで男を好きになるの。湯浅さんのような男と私なら耽美な世界が広がるんじゃないかって想像していたのよ。
あの男は廃退的で、とても魅力的だったわ。
凄く女性的で、それでいて男の人で、日本の多くの男性みたいに威張ったりしないわ。
私、女子とじゃあ駄目なの……駄目だったの。
女子は私と接吻はしても、体を開いてくれないの。
女学校じゃあ、私はモテルの。
幾人かの女子が私にラヴレターを寄越したわ。
でも、駄目なのよ。
誰も私の欲しい物をくれないわ。
……何故かしら。」
私は話し続ける高尾の手にそっと自分の手を乗せた。
高尾はびっくりしたように私を見詰め、続けた。
「私、女子と寝床を共にしたいのよ。
貴女は私のこの欲望に答えてくれるというの。」
続きはコラムにて!
作者紹介■作者:
藤間紫苑 pixiv